002 CYBER-PUNK

CYBER-PUNK | dadaïsme

CYBER-PUNK

「WWⅢ」の制作中、僕の頭の中には時間と自己が交差する物語が渦巻いていました。それは例えば、Netflixシリーズ『DARK』のように、過去と未来の自分が互いに干渉し合う、時間/存在の超越と共存の物語。“時間は直線ではなく、円である”という考えをなぞるように、僕はデザインを通して時間を往復していました。

本コレクション「CYBER-PUNK」は、「WWⅢ」と切り離すことができない“もうひとつの世界線”です。未来の断片であり、過去への残響でもあります。今回もまた、逆再生的な制作アプローチを取りました。完成形から原型を探る。デジタルの中に原始を探す。未来から来た過去を再構築する。

“Cyberpunk”という言葉は、数多くの映像や文学の中で再生されてきました。『Blade Runner』『Ghost in the Shell』『Akira』『Neuromancer』…。しかし、僕にとってのサイバーパンクは、単に「テクノロジーによる救済の幻」を描くものではなく、「人間が技術の中に溶けていく痛み」そのものです。

もしも、戦後日本の高度経済成長期にインターネットが存在していたら――。その問いからすべてが始まりました。復興の光が強いほど、影は濃くなる。繁栄する都市と、取り残された地方。格差の拡張線上で、人間の「中間層的孤独」が露わになる。

「誰にも属せない」という感覚は、もはや近未来的ではなく、すでに現代的です。その曖昧でグレーな心情を形にするために、僕は“重ね染め”という手法を選びました。色が侵食し合い、完全には混ざらない。それは、どこにも属せない魂のメタファーでもあります。

“The street finds its own uses for things.”
— William Gibson


仮想世界のストリートキッズたちは、まだ繭の中にいます。自我をアップロードする準備をしながら、現実という旧世界にしがみついている。CYBER-PUNKは、彼らが脱皮しようとする瞬間の“痛み”と“光”を、布と構築で可視化したコレクションです。